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執筆者の写真弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が未払残業代を解説~監視・断続的労働従事者(医師・看護師等の宿・日直業務)

★未払残業代請求の基礎知識についてはこちらをご覧ください。


<本日の内容>

1 断続的労働である宿・日直業務の一般的許可基準

2 断続的労働である医師・看護師等の宿・日直業務の許可基準

3 断続的労働である医師・看護師等の宿・日直業務の許可基準の内容

4 宿・日直中の通常の勤務時間と同態様の業務

5 許可の限定

6 小規模の病院,診療所等


1 断続的労働である宿・日直業務の一般的許可基準

 監視・断続的労働従事者(労働基準法41条3号)に関し,通常の業務外において付随的に宿・日直業務のような断続的労働に従事する場合に対象となり得ること(昭35・8・25基収6438号)は以前のブログで述べたとおりです。こうした断続的労働である宿・日直業務における行政官庁の許可は,労働基準法施行規則34条とは別に23条で規定されていて,行政解釈による許可基準は,

①勤務の態様(常態として,ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり,定時的巡視,緊急の文書又は電話の収受,非常事態に備えての待機等を目的とするものに限ること。原則として,通常の労働の継続は許可しないこと。)

②手当(宿直勤務1回についての宿直手当又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は,賃金の1人1日平均額の3分の1を下らないものであること。)

③宿・日直の回数(宿直勤務については週1回,日直勤務については月1回を限度とすること。)

④その他(宿直勤務については,相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。)

などとされていましました(昭22・9・13発基17号,昭63・3・14基発150号)。



2 断続的労働である医師・看護師等の宿・日直業務の許可基準

 こうした一般の宿・日直業務の許可基準に加え,医師・看護師等の宿・日直業務の許可基準は,その特性に鑑み,別途の行政解釈が出されています(令元・7・1基発8号)。

 なお,この通達をもって,医師・看護師等の宿直業務の許可基準に関する従前の行政解釈である昭24・3・22基発352号は廃止されていますが, 令元・7・1基発8号は従前考え方を明確化したものであり,従前の許可基準を変更するものではないとされています(令元・7・1基監発1号)。

 令元・7・1基発8号の内容は,以下のとおりです。


3 断続的労働である医師・看護師等の宿・日直業務の許可基準の内容

 医師・看護師等の宿・日直業務については,次に掲げる条件を全て満たし,かつ,宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合に,労働基準法施行規則23条の許可をするとしています。

①通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。すなわち,通常の勤務時間終了後もなお,通常の勤務態様が継続している間は,通常の勤務時間の拘束から解放されたとはいえないことから,その間は勤務については,宿日直の許可の対象とはならないものであること。

②宿日直中に従事する業務は,一般の宿日直業務以外には,特殊の措置を必要としない程度の又は短時間の業務に限ること。例えば,次に掲げる業務等をいい,通常の勤務時間と同態様の業務は含まれないこと。

・医師が,少数の要注意患者の常態の変動に対応するため,問診等による診察等(軽度の処置を含む。)や,看護師等に対する指示,確認を行うこと。

・医師が,外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において,少数の軽症の外来患者や,かかりつけ患者の状態の変動に対応するため,問診等による診察等や,看護師等に対する指示,確認を行うこと。

・看護職員が, 外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において,少数の軽症の外来患者や,かかりつけ患者の状態の変動に対応するため,問診等を行うことや,医師に対する報告を行うこと。

・看護職員が,病室の定時巡回,患者の状態の変動の医師への報告,少数の要注意患者の定時検脈,検温を行うこと。

③①,②以外に,一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。


4 宿・日直中の通常の勤務時間と同態様の業務

 令元・7・1基発8号は,宿・日直中の通常の勤務時間と同態様の業務について,次のように取り扱うとしています。

①宿日直の許可が与えられた場合において,宿日直中に,通常の勤務時間と同態様の業務に従事すること(医師が突発的な事故による応急患者の診療又は入院,患者の死亡,出産等に対応すること,又は看護師等が医師にあらかじめ指示された処置を行うこと等)が稀にあったときについては,一般的にみて,常態としてほとんど労働することがない勤務であり,かつ宿直の場合は,夜間に十分な睡眠がとり得るものである限り,宿日直の許可を取り消す必要はないこと。

②①の通常の勤務時間と同態様の業務に従事する時間について労働基準法33条又は36条1項による時間外労働の手続がとられ,37条の割増賃金が支払われるよう取り扱うこと。

③したがって,宿日直に対応する医師等の数について,宿日直の際に担当する患者数との関係又は当該病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率との関係等からみて,上記のように通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものについては,宿日直の許可を与えることはできないものであること。


5 許可の限定

 令元・7・1基発8号は,宿日直の許可は,一つの病院,診療所等において,所属診療科,職種,時間帯,業務の種類等を限って与えることができ,例えば,医師以外のみ,医師について深夜の時間帯のみといった許可のほか,上述の3②の例示に関して,外来患者の対応業務については許可基準に該当しないが,病棟宿日直業務については許可基準に該当するような場合については,病棟宿日直業務のみに限定して許可を与えることも可能であるとしています。


6 小規模の病院,診療所等

 また,令元・7・1基発8号は,小規模の病院,診療所等においては,医師等が,そこに住み込んでいる場合には,これを宿日直として取り扱う必要はないが,この場合であっても,通常の勤務時間と同態様の業務に従事するときには,労働基準法33条又は36条1項による時間外労働の手続が必要であり,37条の割増賃金を支払わなければならないことはいうまでもないとしています。


2020年7月30日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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