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執筆者の写真弁護士古賀象二郎

福岡の弁護士が未払残業代を解説~働き方改革による時間外労働規制の適用除外・適用猶予

★未払残業代請求の基礎知識についてはこちらをご覧ください。


★働き方改革関連法による時間外労働の上限規制についてはこちらのブログを参照ください。


<本日の内容>

1 時間外労働の上限に関する適用除外

2 時間外労働の上限に関する適用猶予


1 時間外労働の上限に関する適用除外

 2018(平成30)年の働き方改革関連法による労働基準法の改正では,36協定による時間外労働の上限を,法律上罰則付きで設定されましたが,その適用除外・適用猶予について整理しておきます。


 まず,適用除外からですが,新たな技術・商品・役務の研究開発業務は,この労働時間の上限に関する規定(労働基準法36条3~5項,6項2・3号)の適用から除外されるものとされています(労働基準法36条11項)。

 もっとも,適用が除外れるのは労働時間の上限に関する規定で,労働時間規制全体が適用除外となるのではありません。1日8時間,1週40時間を超えて労働させる場合には,やはり36協定の締結・届出が必要ですし,36協定で定めた限度時間を超えて労働させることはできません(岡崎淳一『働き方改革のすべて』(日本経済新聞出版社,2018年)99頁)。


 この労働時間の上限に関する規定の適用除外の手当として,今回の改正によって労働安全衛生法も改正され, 新たな技術・商品・役務の研究開発業務については,1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた労働者に対し,医師の面接指導が罰則付きで義務付けられました(労働安全衛生法66条の8の2第1項,労働安全規則52条の7の2,労働安全衛生法120条1号)。この面接指導とその他の労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く。)に対する面接指導(労働安全衛生法66条の8第1項)は,罰則の有無の点で違いがあります。

 また,この面接指導は, 新たな技術・商品・役務の研究開発業務に従事する労働者の申出なしで遅滞なく行われなければならないもので,その他の労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く。)に対する面接指導が労働者の申出により行われるという点も異なります(労働安全衛生規則52条の3第1項)。なお, 労働安全衛生法66条の8による面接指導も,今回の改正により, 1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月80時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる労働者とされておりますので注意してください(従前は,1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる労働者)(労働安全規則52条の2)。

 そして,事業者は, 新たな技術・商品・役務の研究開発業務に従事する労働者の面接指導を行った医師の意見を聴き,これを勘案し,必要があるときには就業場所の変更や職務内容の変更,有給休暇の付与などの措置を講じなければなりません(労働安全衛生法66条の8の2第2項,労働安全衛生法66条の8第4・5項)。


★高度プロフェッショナル制度適用者への医師の面接指導については以下のブログを参照ください。


2 時間外労働の上限に関する適用猶予

 次に,時間外労働の上限に関する規定の適用猶予措置についてですが,これは以下のとおりです。


①建設(関連)事業(②を除く。)

2024年3月31日まで

→ 有害業務上限に関する規定は適用しない(労働基準法139条2項)。


2024年4月1日以降

→ 上限に関する規定はすべて適用。


②災害時の復旧・復興のための建設事業

2024年3月31日まで

→ 上限に関する規定は適用しない(労働基準法139条2項)。


2024年4月1日以降

→ 1か月100時間未満,2か月ないし6か月平均で80時間以内の上限は適用しない(労働基準法139条1項)。


③自動車運転業務

2024年3月31日まで

→ 上限に関する規定は適用しない(労働基準法140条2項)。


2024年4月1日以降

→ 1か月100時間未満,2か月ないし6か月平均で80時間以内の上限は適用しない。

→ 1年の720時間以内の上限は960時間以内とする。

→ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする上限は適用しない。

(労働基準法140条1項)


④医業に従事する医師(適用猶予は医師のみで,歯科医師・看護師など医師以外の医療スタッフは適用猶予とはならない(岡崎・前掲103頁)。)

2024年3月31日まで

→ 上限に関する規定は適用しない(労働基準法141条4項)。


2024年4月1日以降

→ 厚生労働省令で定める上限時間による(労働基準法141条1項)。


 2024年4月1日以降については,医療提供体制,医師の健康確保,医療の質や安全確保などの観点から,医師の働き方改革に関する検討会で検討され,その結果を踏まえて具体的に定められることとなっていました(岡崎・前掲104頁)。

 その後, 医師の働き方改革に関する検討会において,医師の時間外労働規制の具体的な在り方,労働時間の短縮策等についてとりまとめが行われました(「医師の働き方改革に関する検討会報告書」2019(平成31)年3月28日)。


 【医師の働き方改革に関する検討会 報告書】


⑤鹿児島県・沖縄県の砂糖製造事業

2024年3月31日まで

→ 1か月100時間未満,2か月ないし6か月平均で80時間以内の上限は適用しない(労働基準法142条)。


2024年4月1日以降

→ 上限に関する規定はすべて適用。


2020年6月13日

福岡市中央区 古賀象二郎法律事務所

弁護士 古賀象二郎


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